6回目の辰年 医師会活動を振り返り新年に向かう

弘前市医師会会長
沢田内科医院
澤田 美彦

弘前市医師会には感染症対策委員会がありませんでした。私は血液疾患を専門にしていました。白血病の治療は大量の抗がん剤を投与した後は感染症との戦いでした。また、血友病患者が輸入血液製剤でHIV感染からエイズを発症するという事態にも遭遇しました。このような形で感染症に関わっていましたので、先輩の先生から「そろそろ自分の医院だけじゃなくて、弘前市など周りのことも考えてやらないといけないよ」と言われ、感染症対策委員長を引き受けることになりました。平成16年のことでした。引き続き、平成18年には医師会理事に就任し、感染症だけでなく検診と検査、その後、看護学校の運営を担当しました。平成28年に副会長、令和2年に医師会長に就任、今年は6回目の年男ですので、これまでの医師会活動を振り返り、新年に向かいたいと思います。

感染症対策

平成16年、感染症対策委員会の一つの活動としてメーリングリストを作って情報交換を始めました。平成19年、全国的に麻疹が流行しました。その時にメーリングリストで弘前地区で第1例目の麻疹をキャッチしました。この時の麻疹は大人を中心に流行しましたが、その後、ワクチン接種の新しいスケジュールが整えられました。

平成21年には新型インフルエンザの流行がありました。その時も弘前市医師会が中心となり市内の病院を巻き込んで感染対策を行いました。休日と夜間の時間外診療では急患診療所と輪番病院に受診者が集中することが想定されました。そこで38医療機関が参加して特別な救急診療体制を作り診療を行いました。その結果、大きな混乱もなく新型インフルエンザ流行を乗り越えることができました。市内で対応した新型インフルエンザ患者数は約1万人でした。健生病院の24%を含め病院が47%、急患診療所が28%、個人医療機関25%でしたので、新型インフルエンザ対策では弘前市医師会が大きな役割を果たしました。

特定健診

 平成20年、それまでの基本健診に代えて特定健診が導入されました。メタボをピックアップし早期に保健指導に結びつけ、将来の心筋梗塞や脳梗塞などの血管障害を予防しようとする特定の目的を持った健診です。国が示した検査項目には、心電図、末梢血検査、クレアチニンが含まれておらず、血糖値とグリコヘモグロビンはどちらかの選択でした。弘前市医師会は弘前市民の健康を守り増進するためにはこれらの項目も検査項目に含めるように提案し実現しました。その後、特定健診を基にした糖尿病腎症重症化予防プログラム、慢性腎臓病対策プログラム、高血圧対策プログラムが実施されていますが、最初から健診項目に含まれていましたので有用なデータが出てきています。

医師会看護専門学校

平成24年に看護専門学校の運営に関与することになりました。平成26年には副学校長、平成29年からは学校長として運営しています。弘前市では看護師が不足しています。高校卒業生は年々減少しています。そこで医師会では高校生に情報提供して多くの人に応募してもらうと同時に、社会人を多く受け入れています。看護学科40人のうち社会人で入学した学生が約半分という年もありました。

医師会看護専門学校は各種学校でしたが、平成23年3月から専修学校卒業となりました。つまり、弘前市医師会看護専門学校の単位は大学と同等の単位として認められるのです。その年の4月に、卒業生2人が青森県立保健大学と放送大学の3年生に編入学し2年後に卒業しました。放送大学を卒業した学生は、その後、大学評価・学位授与機構から看護学士の学位を授与されました。この実績を背景に、平成27年4月、放送大学に4年間在学して看護専門学校を卒業すると同時に放送大学も卒業し教養学士の学位を取得するダブルスクール制度を導入しました。弘大構内にある青森学習センターと連携し、放送大学本部からも説明に来ていただきスタートすることができました。

ピロリ菌対策

胃癌の大部分の原因はピロリ菌感染であることが分かっています。弘前市医師会ではピロリ菌対策にも力を入れてきました。ピロリ菌検査と胃粘膜委縮の程度を推定できる胃がんリスク検診の導入を弘前市に提案しました。ピロリ菌は幼児期に感染しますので、感染後できるだけ早く除菌するのが将来の胃癌発生を予防する有効な手立てです。弘前市では胃がんリスク検診を平成26年から開始しました。対象は、40歳、45歳、50歳、55歳の市民です。この時点で40歳で約20%、55歳で約40%の弘前市民が感染していることが判明しました。幸いなことに、平成26年に慢性胃炎に対してピロリ菌除菌治療が保険診療として認められました。

胃がんリスク検診に引き続いて、中学生のピロリ菌検査も提案しました。この年代でピロリ菌を除菌することで、将来弘前市での胃癌死亡数を限りなくゼロに近づけることが目的です。平成29年11月に中学生ピロリ菌除菌事業が初めて行われました。この直前、7月に函館でヘリコバクター学会が開催され参加しました。その時は、弘前市健康づくり増進課の保健師2名を誘って参加しました。もちろん同意を得た上での除菌事業ですが、ほとんどの中学生が検査を受けています。

胃がん内視鏡検診

胃がん検診はバリウムを使って行っています。平成27年4月、国立がん研究センターが胃がん検診を内視鏡で行うことが妥当であるという政策提案を行いました。がん検診は死亡率が低下するという根拠が必要なのですが、それまで内視鏡によるデータがなかったのです。そこで弘前市医師会は胃がん内視鏡検診の準備をすぐに始めました。バリウムでの胃がん検診の精密検査は内視鏡検査で行います。また、内視鏡検査で診断された早期癌は開腹せずに内視鏡で切除することができますので、死亡率が低下するだけでなく、生活の質QOLの面からも優れていることは消化器を専門とする医師は実感しています。弘前市では平成30年8月に待望の胃がん内視鏡検診が始まりました。

胃がん内視鏡検診は8月1日に開始しました。年度途中ですが、区切りよく翌年4月からの開始とすれば、準備が整っているのに検査を受けることが出来ないことになる8ヶ月間に診断されて発見されるであろう人が2年も診断が遅れることになると主張して弘前市では年度途中の8月から行うことになったのです。実際にこの年度に診断されて治療した人は何人もいました。

胃がん内視鏡検診が始まるのが8月1日と決まりました。弘前市ではねぷた祭りの初日です。そこで新聞記者に記事がねぷた祭りと重ならないようにお願いしました。その結果、東奥日報は当時夕刊がありましたので7月31日の夕刊で、陸奥新報は8月10日に記事にしてくれました。

新型コロナウイルス感染症

令和2年3月、青森県で第1例目の新型コロナウイルス感染症が発生しました。弘前市医師会では7月に「弘前PCRセンター」を立ち上げ、主に弘前保健所の濃厚接触者の検査に協力する体制を整えました。令和3年8月からは検査課で会員医療機関からの検査を行い、外注では早くて翌日に分かる検査結果を依頼された当日に分かるように体制を整えました。

令和3年5月からはワクチン接種が始まりました。他の地域では体育館など大会場を用意して集団接種を行いましたが、ワクチン接種は繰り返し必要になるという見通しで、弘前市では最初から個別医療機関で接種を行いました。それが現在も続いています。感染者の治療に関しては、弘大附属病院、弘前総合医療センター、健生病院、鳴海病院などが入院治療を行い、外来診療に関しては会員医療機関も大きな役割を果たしています。

医師会の旧弘前市立病院への移転

 現在の医師会の機能を旧弘前市立病院へ移転する計画はほぼ固まりました。改築工事が始まり完成するのを待つだけです。移転と同時に新しく胃がん内視鏡検診を始める計画です。検査を担当する医師は弘前大学消化器血液内科に派遣をお願いする予定です。

 医師会は会員のための組織ですが、子どもの健診やワクチン、学校医などの学校保健、防災や救急、健診や感染症対策などの地域医療も担っています。これまで弘前市医師会理事として関わってきたことを振り返ってみました。大腸内視鏡検査と結びつけた大腸がん検診などのアイデアもありますので、新しい年も引き続き弘前市医師会の活動に貢献していきたいと思います。

弘前市医師会報 第413号 2024年1・2月号 巻頭言 より

市民のみなさまへ

市民のみなさまへここでは市民のみなさまに向けた医療・健康に関する様々なお役立ち情報を公開しております。ぜひご利用下さい。医師会から...

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弘前市医師会健診センター総合検診車更新について

巡回がん検診などで市民の健康を支える総合検診車が、公益財団法人JKAの補助を受け、 令和5年3月31日、14年ぶりに更新されました。胃部と胸部併用の検診車で、データはすべ...

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ごあいさつ

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特定健診・特定保健指導

特定健診とは  平成20年4月から実施された、メタボリックシンドロームの早期発見を目的とした健康診査です。40~74歳の方は義務、75歳以上の方は努力規定となっています。...

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役員

会長弘前市医師会会長澤田 美彦Yoshihiko Sawada沢田内科医院副会長...

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各種委員会

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弘前市医師会部会のご紹介内科部会部会長玉田 友一外科部会部会長秋山 邦男産婦人科部会部会長...

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急患診療所総合保健センター1階に市が開設した弘前市急患診療所において、内科・小児科の一次救急患者に対応する応急診療を実施。医師会員が輪番制で日曜日・祝日・年末年始の日中診療及び...

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